2014_05
13
(Tue)07:00

貴方じゃなくても(2)

2014/5/13初稿、2014/12/8一部修正






「ショーちゃんなんて、知らないっ!謝ってくれるまで帰らないから!」

あさひは部屋を飛び出した


■貴方じゃなくても(2)



時間は少し遡る

日曜日
あさひは夕方早い時間に帰宅した
明日は生の情報番組の収録がある。8時から放送されるそれに出演するためにはかなり早い時間に局に入らなくてはいけない。
しっかり寝て肌を整えたいし、時事ネタにも対応できるよう朝刊に目を通したい。

マンションの自室前で聞こえてくる騒ぎ声にあさひは眉をひそめた。
ドアを開けると玄関には案の定男物の靴が散乱している。

「お、あさひちゃ~ん。久しぶり~」

騒ぎ声の主たちは、翔太のバンド仲間4人。
もう酒が入っているらしく、部屋はアルコール臭に満ちている。

「ご無沙汰。です」

バンド仲間は年上が多く、あさひは翔太の為に失礼にならないようにいつも少し緊張する。

「仕事だったの?」
「はい、バラエティのゲストで」
「え~、すごいなあ。どの番組?」

番組名を言おうとしたら、翔太に遮られた

「どうせ、隅っこに座ってるだけだよ。お前、昼過ぎには終わるって言ってなかったっけ?腹減ったんだけど」
「スーパーよってたから…。今すぐ作るね」

キッチンに入り、調理を始めたが、リビングではまだあさひが話題に上っている。

「翔太はいいよなあ、彼女が可愛くて料理上手で、おまけに芸能人で」
「え~、別にぃ?アイツ、小さい頃から俺のこと追いかけてくるから付き合っただけだし。芸能人って言ってもヘラヘラ笑って座っているだけのタレントだぜ?」
「贅沢~。俺も言ってみてえ」

ゲラゲラと皆が笑う中、バンドのリーダーが対面式のキッチンを覗き込んだ。

「いい匂いだなあ。あさひちゃん、何作ってるの?」
「あ、鮭のちゃんちゃん焼きです」
「なんだよ、それ」

翔太の不満げな声が上がった

「ヤローに出す料理に魚って…もう少しガツンとしたもの喰わせろよ」
「え、いいよ。俺なんかいつも不健康なモノばかり喰ってるから、逆にありがたいって」

リーダーが気を使ってくれているのが分かったが、あさひは「ごめん。もう一品作るね」と冷凍庫から肉を取り出した。

料理はあっという間に完食した
メンバー達にご馳走様、美味しかったと言われてあさひは嬉しくなる。
皿を下げていると、メンバーの一人に聞かれた

「あさひちゃん、『モーニングエンタ』出てなかった?何曜日?」
「あ、月曜です」
「明日じゃん!朝早いんじゃないの?何時?」

おずおずと入り時間を告げるとメンバーは慌てて腰を上げた

「ごめんな。2人とも。知らずに晩飯までご馳走になって」
「あさひちゃん、ごめん。早く寝なきゃな」

口々にそういいながら皿を下げるのを手伝ってくれ、帰る準備をしていく。

「じゃ、翔太、またな」
「あさひちゃん、ご馳走様。明日起きれたら『モニエン』見るからね」


「お前のせいで、場が白けちまったじゃねえか。入り時間なんて馬鹿正直に言ってんじゃねえよっ、気を遣え、気を」

皆が帰るなり不機嫌を全開に詰る翔太に、流石のあさひもムッとした

「『モニエン』前日は誰も連れてこないって、ショーちゃん約束したじゃない!」
「いちいちお前の仕事なんて覚えてられるかよ!別に俺の客がいようと勝手に寝ればいいだろ?」
「そんなことできないよ」

マンションは1LDKだ。リビングで騒がれたら寝室まで丸聞こえだし、だいたいお客がいるのに一応芸能人の端くれである自分がお風呂に入ったり、素顔をさらすわけにはいかない。

「お前さあ、ちょっとテレビ出てるからって自意識過剰じゃね?たいした仕事もしてねえくせに」

大好きなショーちゃんの言葉とはいえ、あさひは自分の仕事に誇りを持っている。
腹を立てて部屋を飛び出したのだ。


そして冒頭に戻る

怒りにまかせてぐんぐん歩いていたあさひは立ち止まった。
すぐにかかってくると思っていた翔太からの謝りの電話はかかってこない。
鳴ったらすぐに気付くように手に握りしめているというのに。

ため息をついた。
追いかける恋は時々しんどい

(これからどうしよう)

どんどん暗くなっていっている。このまま歩き続けるわけにはいかない。
すぐ部屋に戻るのは嫌だし、実家は遠いし、友達は家族と暮らしている子が多い、マネージャーの北見に事情を話すのは抵抗がある。

(きっと、別れなさいとか言うもの…)

ふと、高いビルが目に入った。

(そうだ、あのスーパーに行こう!)

少し歩いたところにある高級そうなマンションの地下にはこれまた高級なスーパーが入っている。
電波も入るし、客筋もいい。
カートを押しながらブラブラして、翔太からの電話が入ったら、彼の大好きなシュークリームを買って部屋に戻ろう。
目的地が決まったあさひは足を速めた。

もう少しでスーパーへの入り口といったところで、自転車に乗る人に目が行った。
暗いとはいえ、街灯でその姿はしっかり確認できる。

「京子さん!」

思わず出た声に、キョーコは自転車を止め振り返った

「え?あさひちゃん?」
「こんばんわ。すいません。名前声に出しちゃって。私、マンションこの近くなんです。京子さんは…」

自転車はどうみても高級マンションの駐輪場に向かっている。
あさひは改めてマンションを見上げた

「すごい…一流になったらこんな所に住めるんだ」
「え、いや、一流なんてとんでもない!。私はただ、ルームシェアというか、居候というか…」

キョーコが手を振りながら慌てて弁解を始めた時、2人の横にこれまた高級そうな外車が静かに停まった
運転席側の窓が開いて…

「キョーコ、また自転車乗って移動してたの?」

覗いたのは、最近はハリウッド作品でも顔を見るようになった事務所の看板俳優
驚きすぎると声も出なくなることをあさひは知った。


(3話に続きます)

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2. Re:あさひちゃんも。

>seiさん
気付いていませんでしたね(x_x;)私は仕事の障害になる男なんて絶対パスですけど( ̄▽+ ̄*)

2014/05/14 (Wed) 15:29 | ちょび #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

1. あさひちゃんも。

キョコさん同様「紐馬鹿男の本性」に気付けるのでしょうかね。

キョコさんのプライベートにびっくりで、今この瞬間は「家出問題」も忘れてそうですが。(笑)

2014/05/13 (Tue) 20:49 | sei #79D/WHSg | URL | 編集 | 返信

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