2018_02
11
(Sun)00:13

今日ぐらい

なんだか色々邪魔が入り、間に合いませんでした。
10分くらい目をつぶっていただいて

敦賀教ご本尊と、拙宅の4周年を祝しまして…


2018/2/11





夜はまだ明けていなかった。


隣に眠る人を起こさないようにそっと寝返りを打ち、身を持ち上げたキョーコは、サイドテーブルの置時計に視線をやった。
午前4時を少し過ぎた時刻を示し鈍く光るそれは、ほんの数時間前誕生日を迎えた恋人に贈ったものだ。

この部屋に相応しいデザインと機能性を兼ね備えた品を求めてお店を巡り、自分の懐事情との兼ね合いもあって、散々迷って買った品。蓮もとても喜んでくれた。

ちょっと気恥ずかしいけれどロマンチックだと思ったのだ。
2人が本当に恋人となる日から時を刻むだなんて。

なのに


時計とは反対側に眠る恋人の寝顔に視線を向ける。
キョーコにぴたりと寄り添ったまま眠るその顔は穏やかだ。


安堵の息を吐く。


眠る前犯した失態は、彼の眠りを妨げるものではなかったらしい。




■今日ぐらい




「前日はてっぺんギリギリになると思うんだけど…10日は夕方に仕事が一本入っているだけなんだ。だから…その…。」

泊まりに来ないか?

若手№1俳優らしからぬしどろもどろさで告げた言葉の意味が分からほど、キョーコは子供ではなかった。
秋に交際をスタートさせてもう4か月近く、共演者の女の子たちのコイバナに耳を澄ませば、成人男性である彼がそういう欲求を持っているのが自然だということも分かるし、その行為が愛情表現の1つだということも理解している。

自分は蓮が好きだ。
蓮も自分を想い大事にしてくれている。

その想いにこたえたいから、覚悟を決めて頷いた。

それなのに


暴かれていく躰に
自分でも知らなかった自分の姿に
怖くなって泣き出してしまった。


一度堰を切るともう涙は止まらなくて、泣きじゃくるキョーコに蓮は優しく触れるだけのキスをして、はだけていたパジャマのボタンをかけてくれた。

「ご、ご、め、んな…さい。」
「ううん。いいんだ。今日はこのまま眠ろう。」
「で、でもっ。」
「俺こそ無理させたね。ごめん。」

そんなこと…そう言い返したいのにどんどんあふれ出てくる涙でうまく言葉にならない。

「俺の為に勇気ふり絞ってくれたんだろ?それだけで十分だから。」

大きな手が優しくキョーコの頭をなでて、その後抱き寄せられた。

「少しずつ慣れていってくれればいいから。これからずっとそばにいてくれるんだろう?」

だから時計くれたんだろう?
そう尋ねられて彼の腕の中でこくりと頷くのが精いっぱいだ。

キョーコとこうやって一緒に眠れるなんて凄く贅沢な誕生日だよ。そう囁きながら背中が優しく擦られる。

「こ、ん…じょうには自信があったのに。」
「キョーコの根性にはいつも脱帽してるけど、こればっかりは根性で乗り切って欲しくないんだ。」
「でも」
「俺はキョーコの初めてがもらえて嬉しい。だからね。こういう時間も俺のモノだだよ?」

絶対に絶対に誰にも譲る気ないから。

そう囁く恋人の蜂蜜のような声を聞いているうちにいつの間にか眠っていたのだった。


*
*


「……今、何時?」

うっすらと開かれた瞼から覗く彼の瞳は、乏しい明かりの中、深い海のような色をして見えた。

「4時過ぎです。すいません。起こしちゃいましたね。」
「いや…なんか熟睡できたよ。でも起きるには流石に早いね。もうちょっと眠ろう。」
「あの…私…」
「謝らないでって言っただろう?」

肩を抱かれて引き寄せられ、彼の胸に頭を預ける姿勢になった。彼もあのまま眠ったのだろう。パジャマのボタンがはだけて滑らかな肌がむき出しになっている。

「…前にもこんな体勢ありましたね。」
「ん?」
「ほら、セっちゃんが。」
「あ~。キョーコに馬乗りになられたときね。」
「ち、違います!あれはセっちゃんです。」
「うん。でも、キョーコのセツだったから俺は救われた。」
「そんなこと…。」
「いくら社長命令でも他の男にはしないでね。」
「やりませんよ!」

慌てて否定してみれば、分かってるよと言った後に、クックックッ、と蓮が楽し気に笑う。

「なんですか?」
「いや、随分俺たちの関係も進歩したなあって思って。あの頃一緒に寝たらガッチガチだったもんね。」
「付き合ってもいない男性と同じベットで寝るんですから当然です。ってか、あの時そんなこと分かってたんですか?」
「うん。申し訳ないなあって思いながらも、キョーコの温もりがないと自分を保てない気がしてた。」
「あんな棒みたいなのでも、お役に立ててよかったです。」
「たとえガチガチでもキョーコが傍にいてくれるだけでいいと思ってたのに、こうやって眠れる夜が来るんだからね。…凄い幸せだ。」

だから、昨夜のことは気にするな。と優しい彼は言ってくれているのだ。

逞しい胸に耳を寄せた。

どくどくどく…と感じる鼓動

それがまた心地よくて、顔を擦り付けると唇が彼の素肌を掠めた。その途端一定に保たれていたリズムが駆け足になった。

(意識…してくれてるんだ。)

きっと、セツカを演じていた時だってそうだったのだと今なら分かる。己の心臓がバクチク祭りだったから気付けなかっただけで。


自分の身体の奥深いところがじんわりと熱を持つのを感じて、そっと目を閉じる。


眠りの淵を漂いだしたと思ったのだろうか、蓮の手はゆるゆると優しくキョーコの髪をすいている。

数時間前の彼の手も優しく、そして情熱的にキョーコに触れた。


その手と唇によって零れ出る自分のものとは思えない声も
這い上がってくる何かも

前日寝ないで想像していたものとは全く違っていて恐ろしかった。


でも、その一方で確かに感じていたのだ。

キョーコのとの夜に歓喜に満ちた彼の色を。
見たこともない猛々しさに満ちた男としての一面を


何よりそれを導き出した自分だと込み上げる喜びを。


まだ、どこか怖い
でも、それ以上にもっと、と願う自分がいる。


いたずらにもう一度唇を触れてみた。
また跳ね上がる心音に背中を押される

はしたない。そんな不安もよぎるけれど、あの溶けるような熱い目が誰より自分を求めているのだと、そう感じた時の歓びを彼に返したい。そんな想いが勝る。

彼の誕生日だ。
今日ぐらい、精一杯大胆な自分を晒したっていいじゃないか。



また顔を起こすと、髪をすく手は止めないまま彼は微笑んだ。

「ん?眠れない?」
「もう…1歩、進んでみませんか?」

ゆるりと素肌を撫でれば、蓮は大きく目を見開いて、少し怖い顔をした。

「根性で乗り切って欲しくないって言ったろう?あんたに震えて泣いてたじゃないか。」
「確かに怖いですけど。」
「ほら、じゃあ。」
「でも、求められて嬉しいって感じる自分もいるんです。」
「……。」
「それに…」

ベットサイドに視線を向けた。静かに時を刻む置時計がそこにある。

「…時計の針だって進みましたよ?」

今度は明確にそうと分かるよう肌に唇を寄せる。
頭上で「ああ、もうっ。」と呻く声がしたと思ったら、ころりと視界が反転し、そのままキョーコの肩の上に突っ伏されて表情が見えなくなった。

「…どれだけ成長早いんだ。」
「え?何て言いました?」
「…何でもないよ。」

むくり、と身を起こし、こちらを見つめる目には昨夜と同じ、いやそれ以上に情欲と歓喜の色に染まっていた。

「誕生日プレゼント、ありがとう。」
「…いえ。」
「あれはキョーコのこれからの時間と身体を捧げてもらったって解釈してるから。」
「…。」
「これから一生のね。」

逃してあげないよ。と色悪に笑う彼にキョーコも微笑んだ。

「開封後の返品はお引き受けできませんよ?」

それはよかった、と呟いた唇は、優しくキョーコのそれを塞いだ。


*
*


「3時頃ですね。わかりました。着いたら電話ください。すぐに降りれるようにしときます。…そうですか?気を付けます。」

社と電話で話す蓮の後姿を見つめながらキョーコは空になったマグカップをテーブルに置いた。
上機嫌で通話を終えた蓮はこちらを振り向くと甘い甘い笑顔を見せた。

「コーヒーおかわり入れようか?」
「いえ、もう充分いただきました。」
「そう?あ、俺がやるから座ってて。」

いそいそとカップを下げて向かったキッチンからは鼻歌交じりに洗い物をする水音が聞こえてくる。

「社さんに声が浮かれてるって言われたでしょう?」
「よくわかったね。」
「敦賀蓮にあるまじき上機嫌ぶりですよ。」

蓮は軽く肩をすくめると、だって仕方ないじゃないか、と告げる。

「キョーコや社さんの前くらいいいだろ?今日くらい。」
「誕生日、ですもんね。」

幸せそうに。
幸せそうに蓮がうなずく。

「晩御飯は御馳走作りますね。」
「ん。無理はしないで。」

社からの到着を知らせる着信が鳴って、蓮は行ってきますと出ていった。


ソファーに身をあずけてぼんやりすると途端に眠気が襲ってくる。
朝も随分と寝坊したし、キョーコにとってはありえないほど怠惰な半日を過ごしたというのに。


でも

と、先ほどの蓮の笑顔を思い出し、一人口元を緩ませた。

あんなにも、あんなにも誰かを幸せに出来て、
そのことが自分をこんなにも幸せにしてくれるなんて

こんな日くらいいつもと違う一日でもいいかもしれない。


もう1時間ほど眠って彼と囲む夕飯の支度にとりかかろう。

もっと素敵な誕生日にするために。



(FIN)






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Re: 蓮さん、おめでとう

> 〇〇っち様
コメントありがとうございます。
せっかくの生誕記念日ですからね。楽しんでいただけてよかったです♪
きっと、敦賀さんも社さんと2人になったら挙動不審だったと思います。山ほど来るプレゼントとチョコレートをさばきながら社さんは心の中で「このワカゾーめっ」と思っている事でしょう(笑)
自分の駄文でさらに妄想広げていただけるのは本当に嬉しいです。
今年こそ敦賀さんとキョーコちゃんに幸せな時間がやってきますように!

2018/02/15 (Thu) 06:00 | ちょび #- | URL | 編集 | 返信

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2018/02/11 (Sun) 20:21 | # | | 編集 | 返信

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