2014_03
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(Mon)00:12

1歩いっぽ(3)

2014/2初稿、2014/9/22一部修正





■1歩いっぽ(3) ~それは深く浸みこんでいく~




PM6:20

キョーコはテレビ局エレベーターを出て地下駐車場に向かってる。
相変わらず慣れない携帯を操作しているので、周囲の確認はおろそかになっていた。
視界の端に男物の靴が入ったと思ったら、腕をつかまれ柱の陰に引っ張り込まれる

捕まれた腕が痛い。
こんなことをする顔見知りは、どこかの魔界人か自己中な幼馴染位だ。

「離しなさいよ。ショータロー」

そう言いながら睨みつけると、会うのはあの電話の日以来になる幼馴染の表情がおかしなことに気が付いた。
なんだか心配げな、さぐるような…

「お前、何もされなかったか?」
「は?なんなの?唐突に」
「あの後、電話切れてるし…俺はそのあとすぐにレコーディング海外だったし」

ああ、とキョーコは思い当たる。

あの晩突然電話の電源を落としたことに不信を抱いてたのか。
でも、あの夜敦賀さんと一緒にいたことは悟られるわけにはいかない。

「やっぱりあの非通知アンタだったのね。携帯落として電源切れちゃった上に調子悪くなったんだからね!」

本当に大変な夜だったと思い出しながらついた嘘は、いい表情を作れたようで尚の目から心配げな色が消えた。

「ならいいんだけどよ。」

代わりに別の色が目に宿る。

「…俺、あれから2,3日してお前の大先輩様に会ったんだよ」

突然変わった話題と、その話題にのぼった人にキョーコは驚く

「会う?あんたが?なんで?」
「別に。通りかかったからご挨拶に」

本当はあの日の鬼畜ともいえる蓮の気配に、キョーコのことが心配になって押しかけたのだ。

尚は改めて目の前にいる幼馴染を見つめる
尊敬する大先輩に失礼を働いたのではないかと怒りに震える姿はいまだにあの男を優しいとか勘違いしているのだろう。

(あんな鬼畜にすっかり騙されやがって)

「あいつさあ、ちょうど着替えるところで」

キョーコが尚を怪訝そうに見た

「首筋、すっげえ濃いキスマークと歯型あったぜ」

さすが抱かれたい男№1.お盛んなんだな。と笑ってやるとキョーコはみるみる青ざめた。

あの跡を見られた。
恐れていたことが現実になって自分が顔色を失っていくのがわかる。
だか、その顔色を尚は別の意味にとらえたようだ。

「何?ショックうけてんのか?」

ニヤニヤ笑う尚にキョーコが口を開く前に、さっき電話をかけようとしていた相手の声がした。

「最上さん、そこにいたんだ」

振り返ると先輩俳優は穏やかな笑顔のまま近づいてきて、キョーコを隠すように尚の前に立った。

「不破君、おはよう」
「オハヨウゴザイマス。」
「お話の途中だけど、最上さん俺達と事務所戻らないといけないんだ。これで失礼するよ」

君のマネージャーもあそこで待ってるよ。と尚につげると、キョーコを自分の車の方に促した。


「俺にいいましたよね?ツルガサン。」

後ろから尚の声

「跡つけたの。本命だって」

ぴたり、蓮とキョーコの足が止まる。

「大先輩様にはそういう関係のご本命様がいらっしゃるんだぜ。キョーコ」

言い捨てると満足したのだろう。尚の足音が遠ざかっていく。

蓮の身体で尚から死角になっていて本当によかったとキョーコは思った。
自分の身体は今真っ赤だ。
ごまかしようのない位に。

そのまま蓮は何も言わず車まで歩くと、キョーコに後部座席に乗るように促した。
どうやら社待ちらしい。

蓮は運転席に座るとキョーコに振り向いた。

「久しぶりだね。最上さん」

あの告白以来2週間以上会ってない。
毎日のように電話はあった。
そのたびに少しずつ積み重ねられ、告げられた蓮の想い

「本命って…」

ちゃんと顔が見れず視線は足元を泳ぐ

「本命でしょ」
「あれは…」
「役でも最上さんだからね」

もう一度視線をさまよわせているうちに思いついた。

「敦賀さん!わざとアイツに見せましたね?」

来客がいるのに着替えるなんて蓮らしからぬ行動だ。

「やっぱりばれたか」

蓮は肩をすくめた

「君が俺だけはありえないって言ってたとわざわざご注進にきてくれて…あの後、君にあんな無様な姿見せることになっちゃったから…ちょっと意趣返し?…ごめんね?}

ちっともごめんなんて思ってないくせに、器用に上目使いをして見せる

キョーコは蓮をじっと見た。
2週間ぶりの顔。
蓮もじっとこちらを見ている。
その瞳に、あの夜ほどではないが熱が灯る。

「…」

キョーコが言葉を発する前に社の合流し、蓮は瞳から熱をおさめ、穏やかな笑顔で前を向いた。

いつも通りの3人の会話
いや、いつも以上に社がはしゃいでいる気がする。
キョーコは窓の外に流れる景色に視線を向けた

蓮の想い、ショータローが関わると急降下する機嫌や大魔王
少しずつパズルのピースがはまるように、合わさっていく。


ユラユラと思考の渦に入りかけたキョーコを、社のはしゃいだ夕食の誘いが呼び戻した。



(4に続きます)
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コメント

3. 無題

尚はやっぱり自分勝手ですね?
キョーコさんが誰を好きでも構わないんじゃあないんでしょうか?
それにしても尚のマネージャー一体何をしているの?ちゃんと尚に礼儀教えないのかしら?

2014/03/11 (Tue) 12:36 | ちびぽち | 編集 | 返信

2. Re:そうか!

>mokaさん
すごく書きたかったお話なのでそういっていただけると嬉しいです。あのキスマークみて、それだけ、しかもキョーコちゃんがつけたものなんでショータローは思わないはず!

2014/02/21 (Fri) 12:28 | ちょび | 編集 | 返信

1. そうか!

この回いいですね!
ショータロの発言まで予想してた蓮さん。本気ぶりが思いっきり策士!
本命がつけたキスマークって。たぶんショータロはマークだけだとは思ってないから、、。

そして、、はしゃぐ社さん( ´艸`)
楽しみです!

2014/02/21 (Fri) 10:04 | moka | 編集 | 返信

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